FTXはなぜ倒産した?倒産した理由やFTX Japanへの影響を徹底解説
11月11日、仮想通貨大手取引所のFTXが日本の民事再生法に相当する連邦破産法11条(チャプター11)の適用を申請しました。
大口債権者上位50人に対して負っている債務総額が約4400億円であることがわかっています。
FTXを利用していた投資家全体は、100万人に上ると言われ、負債総額は最大約7兆円と言われています。
破綻の影響は非常に大きく、ビットコインは、10日には、1万5000ドルに下落しました。
また、FTTトークンはおよそ22ドルから1.5ドルに下がっています。
現在、FTX.comのWebサイトにはアクセスがしにくい状況が続き、投資家は資金を出金できない状況です。
FTX JapanのWebサイトも同様ですが、いずれ、日本円出金を再開する見通しです。
本記事では、そもそもFTXの破綻は何がきっかけで起きたのか、破綻に至るまでの出来事を時系列でまとめました。
- FTXはなぜ破綻したのか
- チャンポン・ジャオ氏はなぜFTTを売るというツイートを行ったのか
- 最初は買収に合意したバイナンスがその後撤回したのはなぜか
- FTX Japanに保有している資産は引き出せるか
- なぜ日本の取引所は安全なのか
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FTXとは?
FTXとは、サム・バンクマン・フリード氏が設立し、最高責任者を務めていた仮想通貨取引所です。
2019年に香港で設立されましたが、香港当局が仮想通貨取引規制を強化したため、2021年、タックスヘイブン(租税回避地)であるバハマに拠点を移しました。
FTXは、扱う金融商品の種類が多彩であるのが特徴で、現物取引や自己資金20倍のレバレッジ取引の他、先物取引、株式トークンやデリバティブなどの商品もそろえていました。
2022年5月には、金融庁の認可を受けて、日本人向けのFTX Japanがサービスが開始されていました。
一時は、国内でSolanaの取引ができる取引所がFTX Japanのみであったことなどが理由で、人気を博していました。
しかし、今回のFTXの破綻を受けて、11月10日付けで、金融庁から業務停止命令を受けました。
現在は、FTX Japanのプラットフォームは非稼働の状況です。
FTXの倒産を解説
ここからは、FTXが倒産するに至るまでの流れを時系列で説明します。
11月2日:海外メディアCoinDeskがFTXの関連会社アラメダ・リサーチの財務問題をリーク
一連の騒動は、11月2日に、米CoinDeskがFTXの関連会社であるアラメダ・リサーチの財務問題をリークしたことが発端です。
アラメダ・リサーチは、2017年に、FTXのサム・バンクマン・フリード氏が設立したトレーディング会社です。
米CoinDeskがリークした情報によると、アラメダ・リサーチ社が保有する資産約150億ドルのうち、約4割がFTXが発行する独自通貨「FTT」でした。
FTX元CEOのバンクマン・フリード氏は、個人保有する会社であるアラメダ・リサーチに対して、FTXがFTTトークンの発行を行うことで、およそ100億ドル相当を貸し付けていました。
すると、FTXが発行するFTTトークンをアラメダ・リサーチが購入することで、FTTの価格が上がります。
結果として、アラメダのバランスシートの評価額が上がるように見える、という状況が起きていました。
さらに、新たな顧客から調達をして集めた集めた資金を使って、自社トークンであるFTTを買い上げることで、FTTの価格を吊り上げるという流れを繰り返していました。
つまり、FTXは、価値の裏付けのないFTTトークンを、自ら発行し購入することで、価格を釣りあげることで、自転車操業に陥っていたのです。
資産の裏付けが十分ではないFTTトークンは、担保になりません。
FTXの財務が実は脆弱であったことが判明したのです。
11月7日:バイナンスCEOチャンポン・ジャオ氏がFTTを売却するとツイート
11月7日、バイナンスCEOであるチャンポン・ジャオ氏が、FTXの財務問題を踏まえた上で、下記のようなツイートを行いました。
「最近、明らかになったことにより、わたし達は帳簿に残っているFTTを精算することに決定しました。」
このツイートは、チャンポン・ジャオ氏は、保有するFTTを今後すべて売却する方針を明言したということを意味します。
また、チャンポン・ジャオ氏は、市場への影響を最小限に抑えるため、数ヶ月かけてFTTを売却すると述べました。
しかし、このツイートをきっかけに、FTXの顧客が資金の引き出しに殺到し、FTTの価格は上記を受けて急落するに至りました。
FTTコインだけではなく、ビットコインの価格も影響を受ける形で暴落しました。
11月8日:FTXは資金引出停止、バイナンスに支援を求める
11月8日、FTXは資金繰りに窮して、資金引出しを停止しました。
そして、最終的にバイナンスに救済を求めました。
当初、バイナンスはFTXの事業買収で合意したと発表しました。
「今日午後、FTXが助けを求めてきました。ー中略ー 高速力のないLOIに署名しました。近日中に完全なDD(デューデリジェンス)を実施する予定です。」
LOIは、覚書や確認書のようなもので、法的拘束力はないものです。
デューデリジェンスとは、買収する側が売り手側の企業に対して、徹底的に行う調査のことです。
つまり、チャンポン・ジャオ氏は、FTXの事業買収に合意はしたものの、それは法的拘束力がなく、いつでも取引から撤退できる状況でした。
これに対し、サム・バンクマン・フリード氏は、以下のようなツイートを行っています。
「バイナンスとの戦略的取引について合意に達しました。(デューデリジェンスは保留中)」
サム・バンクマン・フリード氏は、顧客が保護されていると強調した上で、「決済には、しばらく時間がかかるかもしれない」と述べました。
11月9日:バイナンス、FTX買収を撤回
ところが、11月9日、バイナンスはFTXの事業買収を撤回すると発表しました。
バイナンス公式アカウントでは次のように説明されています。
「バイナンスは、デューデリジェンス(精査)の結果、および顧客資金の取り扱いの誤りや、米国政府機関による調査の疑い関する最新報道の結果、買収を行わないことに決定しました。」
バイナンスは、「当初、私たちは FTX の顧客が流動性を提供できるようにサポートできることを望んでいましたが、問題は私たちの管理や支援能力を超えています。」とも述べています。
つまり、チャンポン・ジャオ氏が率いるバイナンスは、「FTXの財務状況はバイナンスの手に負えるものではない」と判断したのです。
チャンポン・ジャオ氏は、以下のように述べました。
「悲しい日だ。助けようとしたんだ」
11月10日:日本でFTXの取引停止
FTX Japanは、米FTXの指示に従い、顧客からの預かり資産の出金を停止しました。
それに対して、関東財務局は、FTX Japanに対し、業務停止命令と業務改善命令を出しました。
上記の処分の理由は、FTX Japanが顧客資産の出金は停止する一方で、入金は可能としており暗号資産取引も継続していたためです。
FTX Japanは12月9日まで交換業務の停止、顧客からの新規受け入れはできなくなりました。
また、同じく10日、サム・バンクマン・フリード氏は、アラメダ・リサーチを閉鎖しました。
11月11日:FTXが破産法を申請
11日、FTXが連邦破産法11条(チャプター11)を申請しました。
チャプター11は、日本の民事再生法に相当します。
負債額は、推定数兆円、債権者は10万人以上とされており、仮想通貨業界で過去最大の経営破綻となります。
サム・バンクマン・フリード氏はCEOを辞職し、新CEOとして、ジョン・J・レイ氏が就任しました。
レイ氏は、過去2001年に巨額不正会計で経営破綻した米エネルギー企業エンロンの破産を監督した経験を持ちます。
以上が、CoinDeskのアラメダ・リサーチ財務問題のリークに端を発し、最終的にFTXが破綻に至るまでの経緯です。
FTX Japanの今後の見通し
次に、FTX Japanの顧客の資産はどうなるのかについて解説します。
FTX Japanの顧客の資産はどうなるのか
現在、FTX JapanのWebサイトへのアクセスがしにくい状況です。
FTXに資産がある人は、無事出金できるようになるか不安な方もいるかもしれませんが、いずれ出金可能となる見通しです。
なぜなら、FTX Japanの顧客の資産は、分別管理されているためです。
FTX Japanは下記のようなツイートを行っています。
つまり、米FTXの顧客資産がアラメダ・リサーチなどへの投資に使われていたのに対し、FTX Japanの顧客資産は無事であるということです。
11月14日にFTX Japanは、保有する可能数かおよび法定通貨についての内訳を公開しました。
以下のように、資産超過で、余剰があるのがわかります。
しかし、現在は、FTXのWebサイトに不具合が発生しており、アクセスがしにくい状況です。
日本円の出金については、システムの復旧次第、随時案内するとされています。
ユーザーの中には、「具体的にいつ出金できるようになるのか?」という声が多い状況です。
現状は、FTX Japanの今後の動きをメールやTwitterなどで注視するしかない状況と言えます。
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FTXに関するよくある質問
次に、FTX Japanに関するよくある質問を解説します。
サム・バンクマン・フリード氏とはどういう人物ですか?
サム・バンクマン・フリード氏は、1992年生まれで、カリフォルニア州出身です。
仮想通貨業界では名前のイニシャルである「SBF」という愛称で親しまれています。
スタンダード大学ロースクールの教授の教授を両親に持ち、マサチューセッツ工科大学で物理学の学位を取得しました。
大学卒業後は、投資会社のジェーン・ストリートでトレーダーの経験をしています。
バンクマン・フリード氏は、若くして成功した経営者として、仮想通貨界のスターのような存在でした。
資産家として有名で、一連の騒動が起きるまでは、160ドル(約2兆2000億円)を保有しているとされていました。
「寄付するために稼ぐ」をポリシーとする利他主義としても知られており、ギビング・プレッジへの署名も行っています。
ギビング・プレッジとは、世界有数のビリオネアが保有資産の半分以上を慈善事業に寄付するというキャンペーンです。
2010年、米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏と当時の妻メリンダ・ゲイツ氏がウォーレン・バフェット氏とともに、超富裕層からの寄付を促すために設立しました。
参加者は、28か国、230人が署名しています。(メタ創業者のマーク・ザッカーバーグ氏、テスラCEOのイーロン・マスク氏など)
また、政治家やスポーツ界への寄付にも積極的であったことで知られています。
仮想通貨業界へ対する規制を優しいものにするべく、アメリカ議会でのロビー活動も積極的に行っていました。
特にスポーツ界への働きかけは非常にさかんで、下記のような活動を行っていました。
- メジャーリーグベースボール(MLB)の公式スポンサーとなる
- 米プロバスケットボールNBAのマイアミヒートのホームスタジアムの命名権を取得し、ホームスタジアムを「FTXアリーナ」と名付ける
- FTXの広告塔として、米大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手やプロテニス選手大阪なおみ選手などを起用
バンクマン・フリード氏率いるFTXが、今回の騒動となる前まで飛ぶ鳥を落とす勢いがあったことがわかります。
FTXの破綻は仮想通貨業界へどう影響しますか?
FTXの今回の騒動によって、仮想通貨業界全体の規制強化は避けらないと考えられます。
FTX Japanでは、取引所と顧客の資産分別管理が徹底されていました。
しかし、FTXは、アラメダに約100億の融資をし、そのうち数十億ドル相当の融資に顧客資産を充て、しかもそれは顧客資産の半分以上に上っていました。
このような事態が起きた理由は、アメリカでの規制が日本よりも甘かったことにあります。
金融規制に厳しいことで知られる米上院議員エリザベス・ウォーレン氏は、Twitterで下記のように述べています。
「FTXの崩壊は、議会と金融規制当局がこの業界とその幹部の責任を追及するための警鐘となるに違いない。暗号業界の多くは、煙と鏡の世界です。一般市民を守るために、より強い規則とより強い執行が必要な時なのです。」
現状、仮想通貨に関しては、銀行などの金融機関ほど厳しい規制が敷かれていません。
組織としての透明性を保つため、外部への情報開示をするなどの仕組みがない状況です。
財務状況など、さまざまな情報を公開することで、取引所の透明性を高める必要があります。
そもそも、なぜFTXの財務は悪化するに至ったのですか?
現状、FTXの財務が悪化するに至った理由は2点考えられます。
- ガバナンス(企業統治)の欠如
- 投資家、投資会社などがFTXの杜撰な企業統治を見抜けなかった
まず、1つ目は、ガバナンス(企業統治)の欠如です。
バンクマン・フリード氏が辞任した後、CEOに就任したジョン・レイ氏は、FTXの対して、「今回ほど企業統治の完全な失敗を見たことがない」と述べています。
たとえば、経費申請が絵文字で承認されていたり、一定の時間が経過するとメッセージが消えるアプリを利用していたため、意思決定の記録が残されていないなど、様々な不備が明るみに出つつあります。
また、銀行口座と口座名義人をグループ全体でまとめた正確なリストも存在せず、残高が詳細に把握できないなど、詳しい財務状況さらには負債総額も確定できていない状況です。
杜撰な体制と財務管理ゆえに、財務の悪化を是正することができなかったことが今回の騒動の一因と言えるでしょう。
FTXの財務悪化の要因2つ目は、杜撰な企業統治を見抜けなかった投資家の存在も挙げられます。
FTXは、各方面から出資を受け、レバレッジをかけた急速な成長を遂げてきました。
しかし、FTXに投資したベンチャーキャピタルを始めとする株主は、FTXに取締役を派遣していなかったのです。
新型コロナウィルス流行の状況の中で、各国は金融緩和を行い、市場にマネーが溢れました。
株価が上昇する中で、投資に乗り遅れないことを優先し、投資家たちのFTXの体制や財務への調査が甘くなったことも、今回の騒動の要因として指摘されています。
それによって、監査役や顧問も不在な状況が続き、FTX経営陣への自浄作用が働かない結果となりました。
FTXの倒産のまとめ
本記事では、FTXの経営破綻について時系列でまとめ、FTX Japanの今後、サム・バンクマン・フリード氏の人物に関する情報、また仮想通貨業界への今後の規制、FTXが財務を悪化するに至った原因などを解説しました。
- FTXの破綻は起こるべくして起こった
- FTXと関連会社であるアラメダ・リサーチの財務は自転車操業的であった
- さらに、FTXでは投資資金などに顧客の資産を流用していた
- CoinDeskがFTXの財務状況についてのリーク記事を出したことが、チャンポン・ジャオ氏のツイートに繋がった
- 信用不安により、顧客がFTXから出金しようと注文が殺到した
- FTTトークンだけではなく、ビットコインをはじめとする他の仮想通貨も大暴落した
今回の騒動の全容はまだ明らかになっていません。
現時点で言えることは、仮想通貨市場の健全性を確保するには、規制やルールを敷いていくことが必要ということです。
これを機に、どういったルールや仕組みが必要なのかを議論していく必要があります。
海外の取引所の規制は、日本よりも緩い傾向にあるため、慎重かつ自己責任で利用する必要があります。
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